大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
屋台の方に近づけば、かなり混雑してくる。
その騒がしさの中で、千尋と他愛もない話をしながら歩く。
去年の夏、千歳くんと一緒に花火を見ながら、来年は千尋と一緒に花火を見たいと願っていたことを思い出す。
「去年、千尋は何してたの?」
「どういうこと?」
「いや、私が千歳くんと夏祭り行ってるとき、千尋は何してたのかなって思って、」
「んー、覚えてないけど、ぼーっとしてたと思う」
「……私は、去年のこの日、来年は千尋と行きたい、って思ってたよ」
「……まじ?」
「まじ」
「千歳くんといながら?」
「うん」
「………」
「千尋、どうしたの?」
「……いや、軽率にうれしくなった。そうやって、虹は、すぐ俺のこと喜ばせようとする」
困ったように綺麗な目を細めて、笑っている。
うれしそうにしてくれたら、私もうれしい。
受け取ってもらえなかった過去の分の好きを、たぶんこれからもちょっとずつ私は千尋に伝えていくのだろう。