大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「……っ、」
りんご飴をもつほうの手首を優しく掴まれて、そのまま、すぐに口づけは深いものへと変わる。
「っ、ん、」
周りには誰もいないはずだけど、外なのに甘ったるい声がもれてしまって、急に恥ずかしくなって千尋の甚平の裾をつかむけれど、それだけでは千尋がキスを止めてくれないことはもう知っている。
丁寧に口を開かされて、千尋の舌がはいってくる。
うすらと瞼を上げた先に、艶やかな表情があって、夏の夜には似合わない甘美さを受け取ってしまえば、忽ちたまらない気持ちに襲われた。
そのまま、千尋の舌が小さな欠片を私の口内に残して、ゆっくりと唇が離れていく。
目と鼻の先で、目を細められるだけで、簡単にときめきの鍵はとかされてしまうから困る。
りんご飴の何倍も甘ったるいキスに照れてしまい俯くと、腰に手をまわされて、引き寄せられた。
「……ここ、外だよ」
「うん。でも、誰もいなかったし」
「……飴、さっきまで私食べてたのに」
「俺があげたほうと、どっちが甘かった?」
「変な質問には答えないもん」
昔は触れるだけのキスでさえ、ぎこちなかった人とは大違い。
月日を経て、千尋は徐々に自分の欲をぶつけてくるようになった。
愛ではなく、恋の部分。与えられると、もれなく恥ずかしくて照れてしまうけれど、それ以上に満たされていく。