大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】





「……っ、」


りんご飴をもつほうの手首を優しく掴まれて、そのまま、すぐに口づけは深いものへと変わる。


「っ、ん、」



周りには誰もいないはずだけど、外なのに甘ったるい声がもれてしまって、急に恥ずかしくなって千尋の甚平の裾をつかむけれど、それだけでは千尋がキスを止めてくれないことはもう知っている。


丁寧に口を開かされて、千尋の舌がはいってくる。


うすらと瞼を上げた先に、艶やかな表情があって、夏の夜には似合わない甘美さを受け取ってしまえば、忽ちたまらない気持ちに襲われた。



そのまま、千尋の舌が小さな欠片を私の口内に残して、ゆっくりと唇が離れていく。

目と鼻の先で、目を細められるだけで、簡単にときめきの鍵はとかされてしまうから困る。



りんご飴の何倍も甘ったるいキスに照れてしまい俯くと、腰に手をまわされて、引き寄せられた。



「……ここ、外だよ」

「うん。でも、誰もいなかったし」

「……飴、さっきまで私食べてたのに」

「俺があげたほうと、どっちが甘かった?」

「変な質問には答えないもん」




昔は触れるだけのキスでさえ、ぎこちなかった人とは大違い。


月日を経て、千尋は徐々に自分の欲をぶつけてくるようになった。

愛ではなく、恋の部分。与えられると、もれなく恥ずかしくて照れてしまうけれど、それ以上に満たされていく。




< 432 / 433 >

この作品をシェア

pagetop