大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
千尋の肩に頭を預けて、ぼんやりと空を見上げる。
しばらく、そのまま夢見心地のように見つめていたら、ヒュー、と口笛のような音が聞こえ、暗闇に大きな花が弾けた。
花火が始まったみたいだ。
次々と打ち上がっては消え、
瞳をカラフルに照らしていく。
「……きれい、」
「うん、綺麗だな」
「千尋」
同じ空を見ている。
感動に繋がる何かを共有している。
好きな人と、手を繋いで。
「同じ気持ちで見れて、うれしい」
「……どういうこと?」
分からなくてもいいの。
ただ、去年の苦しかった私に教えてあげたい。
「……好きってことだよ」
「花火?」
「違う」
「なに。俺も好き」
「……花火?」
千尋を見上げれば、違う、と小さく笑われる。
その頭上で、花火が光っている。
ああ、
今年の夏は、間違いなく幸せだ。
『恋人たちの夏』fin.
(寒い冬に夏の真ん中の番外編を失礼しました!)