大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】





「そ、分かった。帰る」





机に広がったプリントと筆箱とノートをかき集めて、スクバにいれて、千尋はあっさりと帰り支度を終らせて、出ていこうとする。

私はそれをぼんやりとベッドの上でながめていた。


だけど、その背中がドアノブに手をかけたとき、やっぱり、どうしても、たとえ何かが危うくても、千尋に一つだけ言ってやりたくなって、千尋、と名前を呼ぶ。



動作がとまって、振り向かないままに、「なに、」って千尋のつかめない声が鼓膜にふれる。






「.......さっき見せた折り紙のハートね、作ったのは千尋だよ」

「..............、」

「千歳くん、じゃないよ。千尋が作って、私にくれたんだよ」





千尋の背中を一生懸命、見る。



私の気持ちも言葉も千尋にこれっぽっちも上手に届かないのは、千尋が私に背を向けて、心臓の裏側から私の言葉を受け入れているからだと思う。




< 57 / 433 >

この作品をシェア

pagetop