大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「そ、分かった。帰る」
机に広がったプリントと筆箱とノートをかき集めて、スクバにいれて、千尋はあっさりと帰り支度を終らせて、出ていこうとする。
私はそれをぼんやりとベッドの上でながめていた。
だけど、その背中がドアノブに手をかけたとき、やっぱり、どうしても、たとえ何かが危うくても、千尋に一つだけ言ってやりたくなって、千尋、と名前を呼ぶ。
動作がとまって、振り向かないままに、「なに、」って千尋のつかめない声が鼓膜にふれる。
「.......さっき見せた折り紙のハートね、作ったのは千尋だよ」
「..............、」
「千歳くん、じゃないよ。千尋が作って、私にくれたんだよ」
千尋の背中を一生懸命、見る。
私の気持ちも言葉も千尋にこれっぽっちも上手に届かないのは、千尋が私に背を向けて、心臓の裏側から私の言葉を受け入れているからだと思う。