大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
でも、覚えていないふりは、させたくなかった。
いつも誤魔化してばかりなのは私なのに、千尋には誤魔化してほしくない、なんて。
天秤は釣り合ってないけれど、そう思ってしまった。
しばらく沈黙が流れる。
それを破ったのは、千尋だった。
顔だけを私の方に振り向かせて、私にはあまりみせない人をなめたような甘い笑顔を微かにつくって首を傾げた。
「そーだったっけ?」
「..............、」
「でも、虹、そんなことどーだっていいよ」
息が止まる。
呼吸を忘れて、無意識のうちにただ瞬きを繰り返している間に、千尋はすぐに私から目を逸らして、部屋を出ていってしまった。