大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「本当に、何やってるんだろうね私、」
「俺と行きたいって虹が言ってたってヘラヘラあいつ笑ってたけど、本当?」
「…ちょっとだけ嘘だよ、それ。三人で行こうって誘ったの」
それで、当たり前のように断られて、その結果がこれだ。
今頃、自分はいい仕事をした、とでも思ってるんだろう。
この前のこと。
昔の記憶を誤魔化し続けられた時のことを思い出すと、まだ、チクリと胸が痛くなる。
はぁ、と小さく息をはいたら、「溜息つきたいのは、俺だからね」とすかさず横から言われてしまった。
「――千歳くん」
「なに?」
「…怒ってる?」
弟より少し身長が高く、弟と同じくらい整った顔が、弟とは違う風な表情をする。