大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
不安げに見つめたわたしの頭に手をおいて小さくなでた後、「別に怒ってはないよ、虹」と優しい声をおとして、きれいなえくぼをつくる。
そのえくぼが、安堵と繋がって、私は大丈夫になれる。
優しい王子様みたいなところは全然変わってなくて、久しぶりの再会だったからか、懐かしい、なんて思う資格もないことを思ってしまった。
夏休みにはいって千歳くんが帰ってきた。
会うのは半年ぶりくらい。
前会ったときとは違って、綺麗な黒髪はゆるいパーマをかけた茶色に変わっていた。
ブランドもののTシャツに黒のスキニーのシンプルな服装は相変わらずおしゃれで、大学でもモテるだろうなあ、とぼんやりと千歳くんを見ていたら、視線に気づいた千歳くんが、ん?って首をかしげてきたから、あわてて首を横に振った。
「そろそろ、行こ。こうなったら、純粋に楽しめばいいよ、俺も虹も」
「……うん」