大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】




不安げに見つめたわたしの頭に手をおいて小さくなでた後、「別に怒ってはないよ、虹」と優しい声をおとして、きれいなえくぼをつくる。

そのえくぼが、安堵と繋がって、私は大丈夫になれる。



優しい王子様みたいなところは全然変わってなくて、久しぶりの再会だったからか、懐かしい、なんて思う資格もないことを思ってしまった。






夏休みにはいって千歳くんが帰ってきた。

会うのは半年ぶりくらい。



前会ったときとは違って、綺麗な黒髪はゆるいパーマをかけた茶色に変わっていた。

ブランドもののTシャツに黒のスキニーのシンプルな服装は相変わらずおしゃれで、大学でもモテるだろうなあ、とぼんやりと千歳くんを見ていたら、視線に気づいた千歳くんが、ん?って首をかしげてきたから、あわてて首を横に振った。



「そろそろ、行こ。こうなったら、純粋に楽しめばいいよ、俺も虹も」

「……うん」




< 63 / 433 >

この作品をシェア

pagetop