大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】




それで私は。

本当のことをいうと、去年のこの日はちょっと苦しかったんだ。

千尋と夏祭りにいけるといううれしさの隙間を縫い合わせていたのは、どこかほろ苦い気持ちだった。



存在しない私の寂しさを、勘違いばかりの千尋が埋めようとしているだけの日だったから。


そこには、千尋と私という間に生まれるものはまるでなかった。
それは、千歳くんのことが好きだと嘘をついている自分のせいだけど。




何を考えているのかわからない千尋の隣で花火を見ながら、好きな人と花火をみている幸せと切ない気持ちの折り合いのつけかたをずっと考えていた。




「なんで、今年は千尋と行かなかったの?虹」



――千歳くんが帰ってきたからだよ。


なんて。


昔とはちがって一定の間隔をあけながらわたしの隣を歩く千歳くんに、そんな最低なことは言えるはずもなく、曖昧に笑うしかなかった。




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