大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「虹、もう平気で俺の前でも千尋のこと考えた顔するようになったね」
ふいに、横からかけられた声に、一気に現実に戻されて、ドキリ、と胸が暗く一度震えた。
よみがえる記憶に、ひゅ、と喉の奥が鳴る。
傷ついた顔。
王子様みたい微笑みのなかに潜り込んでいた、悲しさ。
思い出す。
えくぼを消してしまった日のこと。
「……、」
いま、また、傷つけてしまったのだろうか私は。
昔と、同じように。また?
声だけじゃそれが判断できなくて、恐る恐るとなりを見上げる。