大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
と、
「……それって、虹ちゃん?」
涙声で発せられた自分の名前に、ドキリと胸が大きく鳴った。
千尋たちには、きっと私が下駄箱にいることは気づかれていないと思う。
千尋は、気づいているかもしれないけれど、少なくとも女の子の方は絶対に知らない。
どくんどくんと速くなる鼓動に、深呼吸をしてみるけれど、おさまる気がしない。
「うん。そーだよ」
少しの間をおいて、千尋の声が聞こえる。
別に嘘つく必要はない。
待ち合わせしているのは、本当に私だし。
ただ、
「……虹ちゃんのことは、ど、どう思ってるの?」
___この流れが、すごくいやなだけだ。
17回中17回。
ある意味すごいと思うけれど、きまってふられた後にはみんな私のことを聞く。
そのたびに、どきどきしてしまうんだ。
びくびく、のほうが正しいかもしれない。
「どうって、どう?」
「……え、えと、付き合ってる、とか、」
「まさか」
はは、って笑った声まで聞こえた。
こういうときに笑うのってとても感じが悪いって、千尋は知ってるだろうか。