大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「――俺、好きな人ができたよ」
まるで透明無音の花火のようにその声が鼓膜で響いて、ゆっくりと私の心に届いた。
あの日、ひっくり返せないまま置いてけぼりになった砂時計を優しく千歳くんの手がひっくり返してくれたような、そんな間隔に、私の目頭はなぜか熱くなる。
急にそんなことを言ってくるなんて思わなかった。
あのときの気持ちじゃない。
もう、千歳くんは、前に進んでいる。
私のことをまだ引きずってるなんて勝手に思い続けていた私は、図々しいにも程がある。
傷つけているなんてそんな心配ばかりしていた自分に恥ずかしくなりつつも、それよりもやっぱり、千歳くんが幸せそうな表情をしているうれしさの方が大きかった。