大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「…そっか。うん。そっか」
「なにしんみりしてんの虹」
「…うれしい、から。…どんなひと?」
「んー、あんまり素直に自分の気持ちが言えない子。大学のサークルの後輩だよ、一個下」
ということは、この春に出会ったんだ。
その子のことを思い出したのか、千歳くんの顔が優しくゆるむ。
少しだけ遠くを見るようなまなざしには、もう私なんて映っていなかった。
時間は進んでいる。
傷は、過去のものになってる。
今日、千歳くんとこうしてふたりで会えてよかったのかもしれない。
今、はじめてそう思えた。
罪悪感が、風にさらわれて、私は、今までずっとはいっていた肩の力をようやくぬくことができた。