大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
屋台の灯りが見えてくる。
いつの間にかまわりは歩く人で混雑しはじめていた。
耳は、お祭りの音を拾って、心は、微かに躍ってくる。
お気に入りのギンガムチェックのワンピースが風に揺れる。
千歳くんと別れてから、浴衣はタンスの奥にしまって一度も出していない。
去年も今年も、着る気にはなれなかった。
だけど、今、来年は着ていこう、って思ってる。
私から、誘ってみる。
一緒に行きたいからいこう、って。
一年先のことなら、まだたやすく想像して頑張ろうって思うことができるんだ。
千歳くんが私のことをすべて過去にして、いまただ幼なじみとして私のとなりにいてくれているなら、私も前に進みたいって、思ってもゆるされるような気がした。
なんて、本当は、千歳くんへの罪悪感から解放されて、もう臆病に逃げて時間を止めたままにする言い訳をを失ったからかもしれないけれど。
それでも、千尋のことで頑張ろうって思えたのは今がはじめてで、また、千歳くんに「ありがとう」って言ってしまう。
そうしたら、「なにが、虹」って千歳くんは可笑しそうに笑ったから、その頬のえくぼに幸せを願って、なにもかも、とこころの中で答えておいた。