大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「虹、何食べたい?」
屋台が並ぶ道を歩いている。
千歳くんは、その大人びた見かけによらずりんご飴をかじっている。
甘いものでも、爽やかな甘さが好き、千歳くんは昔から。
虹も食べる?って半分ほど囓られてかけたものを差し出してきたから、遠慮もせず受け取った。
「これ食べ終わったら、焼きそば食べたいかも」
「ちょっとなに、虹それ全部食べる気?」
「だめ?美味しいから、食べたい。虹、りんご飴好きだもん」
「一口だけあげるってつもりで渡したんだけど。まあいいよ、あげる。食べな」
「……ありがと千歳くん。虹に一口とかそういう概念はないよ、残念だけど」
「…ほんとりんご飴好きだな。てか、虹、やっぱり時々自分のこと名前で呼ぶ癖変わってないのな」
「……あ、」
無意識だった。
そう、昔から、他の人には絶対にでないけれど、千歳くんの前では自分のことを“私”じゃなくて自分の名前で呼んでしまう時があった。
関係や気持ちは変っても、癖は残っているみたいだ。