大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
小さな足音がして、女の子が去ってゆく。
鉢合わせになったらどうしよう、と心配になったが、運がよく彼女は私とは逆方向の校舎へと戻っていった。
ほっと胸をなで下ろしていると、すぐにあと一人の足音が聞こえる。
その足音はだんだんと近づいてきて、うつむいている私の前でとまった。
顔をゆっくりとあげると、そこには予想通り、千尋がいて。
「……遅いよ、」
思うことも言いたいことも多々あるものの、不満一つで我慢する私をだれか褒めてほしいくらいだ。
千尋は、ははっ、って小さく笑って、私の頭に手を伸ばす。
その手がゆっくりと髪の毛をなでるから、これが幼なじみの距離なら、恋人となんにもかわらないよ、なんて思ったりする。
小さい頃はこんなんじゃなかったのに。話すだけで赤くなったりしてたのに。
いつから、千尋はこんなふうになっちゃったのかな。
「怒ってんの?」
「別に、そんなに怒ってるわけじゃないけど、」
「けど、なに」
「……待ち合わせ場所かえない?」
そっと上目に千尋を伺えば、思わぬことを言われたからか、少し間の抜けた顔をした千尋がいた。