とある小説家の恋愛奇譚
「ただいまー……て、ん?」
家に帰り、玄関に男物の靴が二足。高そうな革靴のモノは仙川薫のだ。じゃあもう一足は…。
「おー、おかえりシュリ」
「ケリックさん!?」
リビングにはいれば、家の主のように座る仙川薫と、その迎えに座るケリックさんがニコニコとした顔で出迎えた。
「やあシュリ。久しぶりだね」
「久しぶりです。えっと、その、あの」
「おかえりシュリ。友達とランチは楽しかったかい?」
彼の迎えでゆうゆうと座る、嘘くさそうな笑みを浮かべた仙川薫をきっと睨んだ。しかし、ケリックさんがいる手前、とりあえず返事は返す。
「え、ええまあ」
彼がこの家にいることをどうやって説明しよう、と悩んだときーー
「シュリ、恋人ができたならそう言ってくれよ。水臭いなぁ」
「へ?」
「あれ、違うのかい?」
「こ、恋人って…」
すると仙川薫が首を少し傾げてふわりと笑う。
お前かーー!
私が口を開くよりも先に仙川薫が話し始めた。
「ケリッ「すみません、ケリックさん。まだ付き合ってばかりなので、彼女はちゃんと恋人だって認識がないんですよ」
ね、と言う風に視線を向けられる。
ないわ!ていうか付き合ってないから!
「そうなのかい。まあ、この子は恥ずかしがり屋なところもあるしね」
「いや、ケリックさん。ちょっと待って。あの、全くのごーーー」
「シュリ、お茶淹れてくれるかな?」
「仙川、あんたは黙りなさい!おじさん、違うよ。全然誤解だよ!」
「え?」
私はずかずかと二人の近くへ歩み寄った。
否、足元にあった本に足を滑らせ、私はひっくり返りそうになる。
「うわっ」
「おっと」
ぎゅっと目をつぶったが、頭に痛みは感じない。
「大丈夫かい?しゅり」
目を開ければ、イケメンの顔が目の前に。
仙川薫が抱きとめたのだ。
「もうおっちょこちょいだな」
チュッ。
「@&??78&;4&&!??!@!?」
私はひたいを抑えて彼の腕を払いのける。
「な、な、なにを……!?」
「おや、ラブラブだねぇ」
ケリックさん!だから誤解だって!
仙川薫はもう一度、
「シュリ、お茶を飲みたいな」
無言の圧力とともにそう言ったのだった。