ダンデライオンの揺れる頃
『どこに行くの?』

「え?」

『行ったって、何もないよ』

「誰?」

『君、妊娠してるでしょ?』

「いったい、誰なの?」

『子供を大事にしなよ』

「いいかげんにして! あんた、誰なのよ?」

いらいらして、大声で怒鳴った。

『母親になるなら、それらしくしなきゃ』

「うるさいっ!」

地面を、だん! と踏みならすほどの勢いで叫んだ。

その瞬間、下腹部に痛烈な痛みが走った。

急に、子宮が、絞り込まれるように痛んだ。

胎内にいる何かが、腹を食い破って飛び出してくるのかと思った。

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