ダンデライオンの揺れる頃
そうか。

少女は、自分が変わろうとしていた物がなんだったのか、わかりかけたような気がした。

必要なのは、野山を駆ける動物ばかりではないのだ。

そうだったのだ。

少女は、全身が潤うのを感じた。

恋人の腕の中で、まどろんでいるような幸せを感じた。

そして、意識がとけていった。

迷いのない、無垢な世界へ還っていった。

少女は、恋人に会えたのだ。

想いは、廃虚の中にぽっかり出現した草原に帰結した。

それが、全てだった。

そして、朝が来て、太陽が昇った。

あたりを明るく照らす、命の源だった。
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