ダンデライオンの揺れる頃
花の時期はすっかり過ぎて、その冠は、真っ白な、ふわふわのわたぼうしになっていた。

あれがきて以来、はじめて咲いた花だった。

そして、それは今、たくさんの種子を孕んでいた。

たくさんの命を育んでいた。

そよ風が吹いて、たんぽぽのわたげを揺らした。

真っ白になったこうべが、ふるえた。

やがて、やわらかな傘を広げた子供たちが、吹く風に乗って、大空へ舞い上がった。

彼らは、どこまで旅をするのだろう。

ある者は遠くへ、ある者は近くへ、そうして、かつてここに広がっていた、見渡すかぎりの草原に、黄色い花を咲かせるのであろう。

命の確かさを刻むのであろう。
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