おやすみ、お嬢様
そう言う前に、彼の軽いため息が聞こえた。

「仕事?」

「そう」

「今?」

「できれば」

あーあ、だわ、確かに。

「……いいよ? 私、まだゆっくり食べるし」

「すみません」

榛瑠の声が落ち着いていた。ソファに座ってノートpcを開ける横顔は既に職場で見るときの顔だった。

あいかわらず切り替えが早い。

私はもそもそとサンドイッチを食べる。おいしい、けれど、さっきの方がもっと美味しく感じたのは時間がたったせい?

食べ終わると、珍しくお皿なんかを洗っちゃって、それからソファに座る。

そっと、邪魔にならないようにpcの画面を覗き込んで見る。予想通り英文でわからない。

私は少しだけ離れて座りなおした。

まったく、こんなに仕事ばかりで嫌にならないのかと思うけれど、我が社での仕事以外の部分は結構楽しみでやっている、らしい。

よくわからないけど。

なんでこれだけの、といっても正確には知らないけれど多分かなりの量を、こなせるのか不思議だけど、なんだかやっちゃってるし。

むしろ、夜のプライベートの時間が潰れたりとかはうちの会社のせいなんだよねえ。お父様に苦情言おうっと。

前にも言って、だいぶ連れ回すのは控えてくれるようになってはいるんだけど。

……それにしても、暇だわ。
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