おやすみ、お嬢様
「榛瑠、好きでしょ、猫。とくに不細工な子。いたら絶対かわいいよ」

ボスもブサ可愛だったもん。

「……それならもういますよ」

私は驚いて上体を起こした。

「そうなの? 知らなかった! え? どこ? 可愛い子? 可愛いに決まってるけど」

「すごく可愛いのですが、結構大変なんですよ」

「そうなの?」

「そう。お美味しいもの与えないとうるさいし、かまわないと拗ねるし、かまい過ぎると怒るし。結構、面倒なんです。でも擦り寄ってくるのが可愛いので、ついついかまっちゃいますね」

「えー、いいなあ」

いーなー。でもどこにいるんだろう。書斎かな。あそこは私、立ち入らないし。

でも、餌とかトイレとか、どこかにあったっけ? それか、ノラでも居着いているのかな。

榛瑠は画面を見たまま、また私を撫でる。私は勝手にさせておく。触られるのは嬉しい。

彼の指が私の顎の下を撫でる。なんだか私が猫みたい。

……。え、あれ。……あれ⁉︎

「もしかして、それ私⁉︎」

榛瑠は画面を見たまま口元で笑った。

「なによ、もう! 」

二度と、擦り寄ってなんかやらない!

そう、できないとわかっていることを思う。できればいいのに!

私はふてくされた気持ちで再び横になった。見上げると榛瑠は楽しそうな顔をして仕事している。

そうよね、この人ブサ可愛好きだしね。どーせね。自分で言った言葉が痛いわ。

「……どうせブサイクだし」

「そこは違います。それに私は美猫も好きですよ」

そうですか。人の女性もそうでしょう。美しい人が好きよね。
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