おやすみ、お嬢様
外はいい天気で、榛瑠の言うようにまだ日は傾いてないし、気持ちが良かった。

彼の車にのりこむと、行き先も言わず走り出した。ほどなく高速にのる。

どこに行くか聞こうと思ったけれど、楽しみにとっておくことにした。

車内にながれるビッグバンドの音を聞き流しつつ、たわいない会話をする。

「そういえばさあ、昨日鬼塚さん、珍しく集中力なくて挙動不審だったんだけど、なんか知ってる?」

「知りませんし、興味もありません」

「そんなこと言わないで。絶対、鬼塚さんは榛瑠のこと気に入ってるよ」

「彼は仕事はできると思いますが。だいたい、一花は彼のこと気にしすぎです」

「そうかなあ、だっていろいろお世話になってるし。いい人だし」

「私のほうがよっぽどあなたのお世話していると思いますけど」

それは、そうよね。

「えーと、ありがとうございます」

「言葉ではなく行動で示して下さい」

「えー」

何すればいいのかな。けっこう、自分では好きな気持ちがダダ漏れしちゃっててヤバイって思ってるくらいなのに。

職場で二人のこと隠してるのに、つい目が追ったり、赤面しちゃって困ってるのに。
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