おやすみ、お嬢様
付き合って収まるどころかひどくなっている気がする。一人で一方的にだけど。何やってるんだか、私。

「例えばどうすればいいの?料理は習いに行くよ?」

「それは好きにしてくれればいいですが……。例えば、もうすこし積極的になってくれるとか、サービス精神をもってくれるとか、ですかね」

……ちょっと、なんの話? イヤイヤ、突っ込むのはやめよう。絶対、ろくなことにならない。無視。

横をみると、建物の合間から光るものが見えた気がした。

「え、あれ、海?」

声が知らずに弾む。うわあ、すっごく久しぶり!嬉しい!

ついたところは灯台がある岬だった。小高い丘がすぐで遊歩道が整備されていた。

その隙間を縫うように海辺に下りれるところもあって、その近くの駐車場に車を停める。

榛瑠が襟のついたジャケットを手に取る。

「こっちの方が好き、こっち着て」

そう言って私はもう一枚あったカーディガンを彼に渡した。

「お嬢様は?寒くないですか?」

「平気です」

ちゃんと着てますもの。

榛瑠は車をおりるとカーディガンを羽織る。赤にオレンジがかかったような色の、ざっくりしたそれは、風に揺れる彼の金色の髪に映えて、とても綺麗だと私は思う。

男の人にキレイはへんかな。でも、彼はときどき、綺麗だ。


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