おやすみ、お嬢様
「どちらかというと、誰かといてその人に迷惑かかりそうな時は気になります。めったにないですけど。今とかね」

「私? 私は平気だよ。誰も見てないもん、私なんて。ただ、あなたがどう思ってるのかなあって思っただけ」

私なんてせいぜい何か思われたところで、何、あの子、似合わないってくらいよ、どうせ。

「それならいいですけど。まあ、人の顔なんてすぐ慣れますからね。会社なんかではほぼいないでしょう?最初だけですよ」

そうかなあ? 結構、違う女子いるような……。この前、ストレス解消とかって他部署の子が覗きに来てたらしくて、怒ってたし、私の周り……。

でも、確かに赴任当初に比べればずっといい。

「結局、見てくるヤツって関わりのない、どうでもいい第三者なんです。そんなヤツどうでもいいから」

そうかあ、そういうふうに思うんだ。これに限らず、自分にとって必要なこととそうでないことの線引きがはっきりしているなあと思う。

「もっとも例外もいますけどね」

「え?」

「会社で目がよく合う人も正直いますし。あと、なんでだか、一番慣れてそうな人がよくボケって見てくるとかね」

ボケって、あの、それってつまり……。

「え、あ、私ですか?」

「自覚あったんだ」

榛瑠が笑いながら言う。だって、仕方ないじゃない。気づくと見ちゃってたりして、でも、後の祭りというか。後から、あっ、て思うというか……。

「不可抗力なんだもん……」

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