おやすみ、お嬢様
その日のディナーは海辺沿いにあるフランス料理店だった。

「ここ知ってる。 会社の女の子達で話したことあるよ。割と最近できたんでしょ?予約取れないって聞いたけど……」

「そうなんですか? 高校の時の友人の店なんですけどね」

あ、そうなんだ。知らなかった。誰だろう?

榛瑠は襟つきのジャケットに着替えていた。このためにわざわざ持ってきていたのね。

お店は落ち着いていてとてもすてきだった。

大きな窓から暮れていく海がよく見えた。

料理のコースはいくつかあったみたいだけど、時間もあったし、お腹も空いてたし、フルコースに。

私はメニュー殆ど見なかったけど。全部おまかせ。

「お酒すこしはいただきますか?」

「うん。でも榛瑠は運転あるし、いいよ、私……」

「私は飲みませんが、気にしないで」

そう言って、食前酒もワインも全部決めてくれた。

何人かのお見合いしてお付き合いした男性達も場慣れてて、スマートな方が多かったけど、榛瑠はそれだけでなくこちらの嗜好を知っててくれているので、より安心というか、正直、楽。

この楽さというか、楽しさは女子の特権だなあ。だからせめて背筋を伸ばして微笑んでみる。

少しでもキレイに見えるといいな。私なりに。
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