おやすみ、お嬢様
引っかかった出っ張りは1人いるには十分な大きさだった。できることはやった。それでも、夜の暗闇が訪れると不安が襲ってくる。雨風は強くなり不安を煽った。
やばいな、ここで詰みか、俺の人生。まさかな。
だとしたら随分とロクでもないもんだ。これなら、子供の時に両親と一緒に死んでりゃよかったのに。
今までも何度もそう思ったが、この時もそう思っていた。状況に腹が立っていたし、嫌気がさしていた。
まあ、仕方ない。そんなものなんだろう、結局。……ああ、でも、このまま死んだらお嬢様は悲しむだろうか、それとも怒るだろうか?
そもそも、今どうしているのやら。婚約破棄されたらしいけど。俺のこと忘れてはいないだろうけど、どうしてるのかな。
旦那様、つまり一花の父親には定期的にこちらの状況は連絡を入れてはいた。それが留学の条件だったからだ。でも、日本のことは聞かなかった。もう、関係なかった。そうでありたかったし、一花にも俺の情報はいってないはずだ。
ああ、そうか、俺が死んでも一花には知らされない可能性も高いな。それならそれでいい。
幸せでいてくれたらいいんだ。
悲しんでほしくない。
もしそうでもどうしてもやれない。