おやすみ、お嬢様
小さく息を吐く音がした。呆れてるんでしょ、わかってる、くだらないよね。わかってるわよ。でも、私の気持ちも少しはわかりなさい。

「一花はあれだね」

なによ。

「ベットの中のほうが素直だよね」

私は振りかえるとソファ越しに抱えていたクッションを思いっきり彼の顔にぶつけた。

榛瑠は腕でよけつつ声を出して笑った。

「だって、そうだろ。どっちも可愛いけどさ」

「調子のいいことばっかり言ってないでよ!」

「ごめん、そんなに怒らないで」

榛瑠が後ろから耳元に優しい声で言う。その時点で既にあざといわ。

「そう言うけど、私にとっては悪くない休日ですよ?さ、そろそろ機嫌直しませんか?せっかくの休日なんだから。お腹空きませんか?何か召し上がります?」

そう言われて、まあそうだけど、と思う。あんまり怒っていてもいいことないし。なんか納得できないけど……。

「何かって、なに?」

「サンドイッチくらいなら用意できますよ。外食でもいいですし。召し上がりたいものありますか?」

外に行きたいなあって思う。でも、榛瑠のご飯も食べたい。最近、食べる機会なかったし。どっちも捨てがたい……って、私、食べ物で懐柔されすぎだよ。

「サンドイッチだったら中身は?」

トゲトゲしい私に彼は穏やかに答える。

「ベーコンとトマト、あとは バジルチキンってとこかな」

待って、なにそれ。私の好きなやつじゃない。家にあるものでっていうのじゃなくて、わざわざ用意してあるやつでしょ。
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