涙空
頑張り屋さんのキミに負担を掛けたくなくて

「春、ゴロンしましょうね?」

「ん、っくん。終わったらね、絵本。絵本、読むよ?」

ぎゅっとブランケットを被り、左手を差し出した

「ふぇ、ぇーん!」

「痛かったですね、良く頑張りました。」

優しく包帯を巻き、針が動かぬように固定する

「りゅぅ、ぁっこ?」

だっこを求める声に応えてあげたくて

ブランケットに包んだまま抱き上げて

「春ー?」

「りゅぅ、あのね?」

「ん?」

「ネンネ、する時ね?学校、行くの考える。でもね、怖くて。っく、あのね、りゅぅ、せんせっ?傍に居ないの、こわいっ。」

「そうですね、教えてくれてありがとう。怖いよなぁ、春。」

初めて出来た信じられる大人の存在

今までは、傍に居なくても施設の中には居てくれて、名を呼べば会えたのに

学校に行けば、声を聞くために電話は出来ても触れられないから

「ん、ふぇ、ぇっ。」

「ゆっくりで良いんですよ?春は、頑張り屋さんですからね?ゆっくり、ゆっくりです。」

「りゅぅ、せんせっ?一緒に学校行ってくれる?」

「はぃ。一緒に行きますよ?」

春が小学校に足を踏み入れたのは、それから半年後のことだった
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