これは雨の物語
「…バニラ」
「ん?」
君も名前を呼ばれることで幸せだと思ってくれたらいいなと思って呼んだなんて、君は知らないよな
「それにしても綺麗な髪ね」
本当はこの真っ白な髪を見せるのが怖かった
「ねえ、シラユキはどうしてあんなところにいたの?」
「…どこに行けばいいか分からなくて」
「どこから来たの?」
「地下…から」
「地下?」
僕はそっと頷いた
彼女の顔が見れなかった
「…閉じ込められてたの?」
「いつでも出れたんだ。でも…決心がつかなくて。7日前に初めて地上に出たんだ」
「あなたは…月の民なの…?」
僕の髪を触る彼女の手が震えていた
「…うん」