これは雨の物語
「そっか」
手が離れた
そっと彼女の顔をみると、君はいつもと違う歪な笑顔を作っていた
「月の民は…悪いの?」
僕は初めて人に質問をした
バニラはふと窓を見た
「雨…やまないね。もう15年前から降ってるんだ」
「……」
「…呪いなの。私たち太陽の民が、月の民を虐殺したときの」
そうじゃないかと思ったなんて、言えなかった
地下にいるときに誰かの日記を読んだことがある
15年前、月の民狩りがあったそうだ
もちろん狙いはこの真っ白な髪
その日記の持ち主は命からがら逃げてきたそうだ
そのとき一緒に地下に逃げこんだ人との間に産まれたのが僕だった
両親は恨んでいた。太陽の民を
そして地下に僕を残し二人は復讐のために地上に出る決心をした
そこまでで日記は終わっていたけれど、そうか、この雨が二人の復讐なのか