これは雨の物語
「シラユキは…私が憎い?」
「…バニラは、僕が復讐のために外へ出たのかと思ってる?僕が…怖いの?」
バニラは思いきり首を横にふる
「シラユキが復讐のために外に出たなら私なんてとっくに殺されてるわ。でも…違う。だから…怖くない。でも…」
「僕も一緒だよ」
彼女の震える手をそっと握る
「月の民を殺したのは君じゃないだろ。だから憎くない…。むしろ感謝してるんだ」
彼女の目からは今にも涙がこぼれそうだった
「きっと君はこの髪を見たときから僕が月の民だって知ってたんだろ。それでもこうして…僕の目の前にいてくれるんだ」
人のぬくもりを感じるのは…初めてなんだ
だから、憎いはずがないんだよ
途端に睡魔が襲ってきて、目の前がぼやけ始めた
「あり、が、とう…」
そう言えたのが満足で僕は目を閉じた
「でもシラユキ…。あなた水の紋章があるのよ…。この雨を降らせてるの…あなたなんでしょう…」