恋の残り香 香織Side
事故
大学からの帰り道。
香澄は歩道を少しぼんやりしながら歩いていた。
レポート提出の為に徹夜続きだったので、寝不足気味だったのだ。
白線だけが引かれた歩道。
目の前からフラフラ不自然な走行をする車が近付いている事にも気付いていなかった。
キキーッ
激しいブレーキ音と同時に香澄の意識は吹き飛んだ。
「香澄、香澄!」
目を覚ました時、体中に激痛が走った。
青い顔をした家族が香澄を心配そうに見つめていた。
「…どう、したの?」
体を起こそうとしたが、少し動かすだけで全身に激痛が走る。
「動いちゃ駄目よ!」
母親が泣き出しそうな顔で香澄を制した。
「事故に遭ったのよ」
「事故?私が?」
必死に思い出そうとしても何も思い出せない。
ただ悲鳴のようなブレーキ音だけが耳の奥に残るだけ。
「居眠り運転の車に衝突された車が香澄を…」
父親が顔を歪めながら話していたが、香澄にはやはり思い出せない。
しかし全身の痛みが現実を告げている。
「生きてて良かった…」
いつもは気丈で口煩いだけの母親が、香澄の頬を撫でながら涙を流していた。
香澄は歩道を少しぼんやりしながら歩いていた。
レポート提出の為に徹夜続きだったので、寝不足気味だったのだ。
白線だけが引かれた歩道。
目の前からフラフラ不自然な走行をする車が近付いている事にも気付いていなかった。
キキーッ
激しいブレーキ音と同時に香澄の意識は吹き飛んだ。
「香澄、香澄!」
目を覚ました時、体中に激痛が走った。
青い顔をした家族が香澄を心配そうに見つめていた。
「…どう、したの?」
体を起こそうとしたが、少し動かすだけで全身に激痛が走る。
「動いちゃ駄目よ!」
母親が泣き出しそうな顔で香澄を制した。
「事故に遭ったのよ」
「事故?私が?」
必死に思い出そうとしても何も思い出せない。
ただ悲鳴のようなブレーキ音だけが耳の奥に残るだけ。
「居眠り運転の車に衝突された車が香澄を…」
父親が顔を歪めながら話していたが、香澄にはやはり思い出せない。
しかし全身の痛みが現実を告げている。
「生きてて良かった…」
いつもは気丈で口煩いだけの母親が、香澄の頬を撫でながら涙を流していた。