恋の残り香 香織Side
香澄は部屋に篭りずっと考えていた。


健司を彼女に返してあげなければ…

だけど返したくない

そばにいてほしい

例えそこに心がなくても

だけど、あんな健司を見たくない

私じゃ駄目なの?

私じゃ彼女の代わりにならないの?


代わりになんてなれない事は嫌という程分かっていた。

代わりになれていたら、今、健司があんな風であるはずがないのだから。

それでも願わずにいられない程健司を欲しかった。

それが恋とは違うものだとも気付かずに。



「香澄?」


友人の声で目が覚めた。

そっとドアを開けると、心配そうに友人が立っていた。



「連絡もらって、心配だから来ちゃった。
入ってもいい?」


香澄はドアを開けて友人を部屋に入れた。

廊下の隅で母親が心配そうに見ていたのに気が付いたが、フイッと顔を背けた。
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