恋の残り香 香織Side
「そっか…」


友人の琴美は香澄の話を黙って聞いてくれた。


「大変だったね。
でも私は応援するよ」


そう言ってもらえると思っていた。

しかし現実は違っていた。

琴美は難しい顔をしている。

口を開いても言葉を選んで話すような、ぎこちない感じがした。


「何?
何かあるならはっきり言って?」


香澄が業を煮やして言うと、琴美は小さな溜息をついた。


「…気を悪くしたらごめんね。
香澄を本当の友達だと思ってるから…言うね。
香澄はさ、健司君の事を独占したいだけで…香澄の気持ちは恋愛じゃないと思う。」


香澄は琴美の言葉に驚いた。


恋愛じゃない?


「そんな訳ない!」


香澄は思わず大きな声を出した。

頭にカーッと血が上る。

「ごめんね…でもね」


意を決した様に表情を変えて、琴美は言葉を続けた。


「そばにいてほしい、離したくないばっかりで、香澄の口からは好きって一言も出てこないのは何故?
本当に好きなら、苦しい位そういう気持ちが溢れてくるもんじゃないの?」


琴美の言葉に香澄は黙り込んだ。
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