恋の残り香 香織Side
美加の部屋に行った翌日も健司は香澄の元へやってきた。

よそよそしい態度が鼻につき、香澄は思わず


「私を選んだのは健司君でしょ?
だったら美加さんの前で笑ったみたいに私の前でも笑ってよ」


と言ってしまった。

健司の顔色がみるみるうちに変わっていく。


「…これ以上何を望むんだよ」


聞き逃す程の小声だったが香澄は聞き逃さなかった。


「すいません、今日は帰ります」


健司はそのまま帰ってしまった。



「…酷いと思わない?」


香澄は今までの事を友人に電話で話した。

琴美に話す気にはなれなかったので、香澄の肩を持ってくれそうな友人を選び電話をかけた。

しかし、返って来たのは欲しかった言葉ではなかった。


「香澄ってさ、自分がどんだけ恵まれてるか分かんないの?
お金持ちで、親は香澄の言いなり。
弱みに付け込んで彼氏まで手に入れて、それでもまだ足りない?
我が儘もいい加減にしたら?!
あたしさ、正直、今の香澄には付き合いきれないから」

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