恋の残り香 香織Side
「手術、うまくいって良かったね」


琴美が安心したように笑いながら言ったので、香澄はにっこりと微笑んだ。


「香澄の足な、動くようになるかもしれない」


父親がそう言ったのは三週間前。

香澄は一縷の望みをかけて手術を受けた。

万が一うまくいかなくてもこれ以上悪くなる訳がない。

それを思えば怖いことはなかった。

術後の経過は良好。

抜糸が済めばリハビリに移行する。

少しだが確実に自分の意志で足を動かせる。

リハビリを積めば日常では困らない位動かせる様にもなる。


「式、出れなくてごめんね」


香澄の言葉に琴美は首を横に振った。

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