恋の残り香 香織Side
琴美はメモを見ながら歩いていた。

住所は大体あっているはずなのだが、目的の家が見当たらない。

キョロキョロしながら歩いていると


「どうかしましたか?」


と女性の声が聞こえた。


「このお宅を探しているんですが、ご存知ありませんか?」


女性にメモを見せると


「これ、うちだ」


と驚いたように言った。


「…美加さんですか?」


「はい…」


「あなたにお話があって来ました…」


「立ち話も何なので、よかったら家に来ません?」


美加はにっこりと笑いながら言った。

ショートボブの赤茶色の髪がサラサラと揺れている。

優しそうな二重の目に白い肌。

ビジネスにも普段着にも取れる服がとてもよく似合っている。


『この人があの美加さんなのか』


琴美は美加の後ろを歩きながらぼんやりとそんな事を考えていた。

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