恋の残り香 香織Side
「どうぞ。
嫌いだったらごめんなさい」


ラズベリーのフレーバーティーが甘い香りを漂わせる。

香澄の家とは違い、小さくこじんまりとした家だったが、優しい雰囲気の漂う幸せが溢れているような家だった。


「あの…突然すみません」


琴美は自己紹介と自分が来た理由を話した。

話していくうちに美加の表情が雲っていくのが分かった。

話が終わると、美加は小さく溜息をついた。


「あたしにどうしろと?」


美加が青ざめた表情で尋ねてきたので、琴美は香澄に頼まれた内容を話した。


「…それは…多分、無理だと思います…
健司は一度決めた事は曲げない」


「だけど…」


「今更…そんな事を言うなら、初めから…」


美加の気持ちが伝わってきて、琴美は苦しくなった。


「今日は帰ります…
突然申し訳ありませんでした…
これ、私の携帯の番号です。
もし、気が変わったら連絡してください」


琴美は深々と頭を下げて美加の家を後にした。
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