恋の残り香 香織Side
それ以来、香澄の中での健司の存在はどんどん膨らんでいった。

健司が来るのが待ち遠しくてたまらない。

さっき別れたばかりなのにもう会いたくなる。


「健司君って、彼女とかいないんだね?
じゃなきゃ私の所に毎日なんて来れないもんね」


「…」


香澄は健司に思い切って尋ねた。

健司はいつもの様に無言だった。

それを香澄は良い方に受け取ってしまった。

健司がどんな表情でいたのかさえ見てはいなかった。

苦痛に堪えるような表情をしていたのに…


「健司君はどんなこが好み?
私はね、優しくて、誠実で、無口だけどあったかい人が好きなんだけど」


香澄は気持ちに気付いてほしくてそう言った。

健司は香澄の気持ちに気付いていたが、それを受け入れる事はできなかった。

彼女の美加をとても愛していたから。

だから、美加の事を考えながら答えた。


「俺は…不器用で、少し頑固で、でも涙もろくて、俺のわがままも駄目な所も全部晒しても笑ってかっこいいなんて言ってくれる…そんな人が好きです」


香澄は何故かそれを自分の事だと勘違いしてしまった。

頑固等と言われた事もなければ、不器用でもないのに。

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