綺麗に泣く
「百武、頼む、牛丼…」
最後の力を振り絞って百武に言った言葉がこれである。
ったく。熱あんなら言えよ。つか、俺も気付けよ、とイライラしている百武は、やはり優しいので、ちゃっかり牛丼屋の前売り券を買いに来ている。
「牛丼2枚。」
前売り券販売をしているのは、敦さんだった。
「…おバカ田ちゃんは?」
「熱出して倒れました。だから俺2枚買ってるんす。」
「はは、バカだね、ほんと。…百武君さ、好きでしょ、おバカ田ちゃんのこと。」
かあああっと染まる百武の頰は、肯定しているも同然だ。
「だったら、なんだよ」
「何でもないよ、別に。ただ、言っちゃえばいいのにって思ってるだけだよ。」
敦は、少し口角を上げ、見下ろし、馬鹿にしたように言う。
「あんたには関係ないだろ。」
「そうだね。…百武君さ、1人分でいいよ、買うの。お金も返すわ。」
「は、なんで!」
「おバカ田ちゃんの分は、俺が買うから。」
言い返そうとした百武に、敦は、後ろ並んでるから、早く帰んな、と追い出した。
「先輩、あいつの気持ち知ってんでしょ。つかあんたも、ちゃっかり明のこと気にしてんじゃん。」
去り際に、悔し紛れで言った言葉を敦がどう受け取ったのかは、知らない。