綺麗に泣く

ふーん、変なことするなよってね、と百武が残した言葉を思い、敦さんは、フッと笑う。

「あ、敦さん、なんでこちらに?体調悪いですか?」

「いや、俺は体調管理ぐらい自分でするから、倒れたりしないんだよね。どっかのバカみたいに。」

明は、何が何でも自分のことをバカだと言う敦さんに、はぁ、と肩をすくめる。

バカで良かったと思うこともあるけど、バカバカ言われるのもあんま良い気しないなあ、と感情が表に出やすい明の頰は、プクッと膨れる。

「なに、怒ってんの。」

そう言って明の膨れた頰を指でつつく。

「ははっ、ごめんごめん。明のこと見てたらイジメたくなんだよね」

え!今、今あたしのこと!

「明って呼んだ…。」

唖然と口を開く。

「あー、百武くんそう呼んでるし。他の呼び方知らないし。いいよね?」

勿論です!と首を激しく縦に振る。

「牛丼券欲しい?」

「え、はい!」

目を輝かせる明の反応を面白く思う敦は、うーん、と考える。

「タダではあげないけどね。」

「え!何したらいいですか!」

「んー…じゃあ、ライン教えて。」

突然の敦さんからの条件に、ビックリして目をパチパチさせる。

…なぜ?

「な、なんでですか」

「え、嫌?俺の受験勉強の息抜きになりそうじゃん。」

ホオオオオオ!敦さんの息抜きを手伝えるのか!とても光栄じゃん!

「ライン言います!息抜きのお手伝いさせていただきます!」

敦さんは、うん、と笑ってスマホを取り出した。

そして二人がお互いの連絡先を追加し合ったところで、保健の先生がやって来て、敦さんとは、別れた。
< 13 / 23 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop