綺麗に泣く
やり返そうとする百武から逃げる明は、ふと、足元の何かに、足を滑らせて転ぶ。
ドテッ
「は!?明?何してんだよ!?大丈夫か?」
「やっばい、すっごい痛い!あーも、どーしてくれんだよー、百武よお!」
わ、悪るい、とバツが悪そうに謝る百武をよそに、明は転んだ原因となる、何かを拾い上げた。
「え!!!」
「なんだよ?…あ?なにそれ。それに滑ったの?」
なんだよ、見せて、と言って明から取り上げようとする百武の手を振り払う。
何かっていうのは、進路調査票とその詳細が書かれた、1年にはまだ縁がない用紙だった。
「こ、これ!!!!運命かも!?」
目を輝かせて、用紙をギューっと抱きしめる明を見て、百武は眉をひそめる。
「は?お前なに言ってんだよ。それ、3年の大事な紙なんじゃねえの、誰の?届けないとじゃん、見して。」
「ちょ、触らんで!これ、なななんと!番場敦さんのだよ!」
百武は、嬉しそうにする明を横目に、やり場の無い気持ちに襲われる。
「良かったじゃん。」
そうですそうです!番場敦さんというのは、あたし、明の片想いの相手。
なんで、あたしがこの用紙で滑ったのか!それはまあ、運命ですよね!はい!
明は拳をギューんと突き上げる。