綺麗に泣く

まあ、これを片想いと言うのかは、わからない。
ただ、敦さんとすれ違うだけで幸せになって、その広い背中を見て、胸がキュってなって。

喋ってみたいな、お友達?いや知り合いでもいいからなりたい!という、どこの正統派だっつうくらいの、それだけの想い。

なんてことを考えながら、購買前で突っ立ってる。

昼休み開始のチャイムが鳴ってから約20分。

敦さんは購買でパン買ってると思うんだけどなー。

今日は来ないのかなー、お腹空いたなー。

でも、帰れない。大事な書類だから、早く渡さなくてはいけない。

「やべー、遅れたー、好きなん残ってるかなー!」
そんな声とともに廊下の奥からバタバタと、男子生徒2人がかけてくる。

あっ。

明の前を通り過ぎようとした時、

「あの!!淳さん!」

「…はい。」

若干引き気味の敦さんが返事をしてこちらを向いた。

連れの方は、楽しそうに、
え?なになに?告白〜?なんて言って、敦さんの後ろをぴょんぴょん跳ねている。

「あ、や。これ、落ちてたんで。」

ど緊張して、最後は声が小さくなってしまった。

「え、あ!…どうも。」

ペコって会釈して、用紙を受け取った。

グーーーギュルルルルー。

え?は!今のって。

「食べてないの?」

「あ、はははは。はい。ずっと待ってて。」

ハハハハハ、と乾いた笑みが張り付く。
はっずかしーーーーーーー!

ちょっと待ってて、と言われ、待っていると、パンを手にした敦さんが、そのパンをあたしに差し出している。

「あげる。腹減ってんでしょ。」

「え!あ、いえ、もらうには至りませんよ!」

「もらってよ、せっかく買ったんだし。」

そう言われると受け取らずにはいられないので、おずおずと頂く。

「ほんと、バカだね、置いときゃいいのにさ。」

じゃね〜、と連れの方が言って、敦さん達は去って行った。

ム!なに今の!?

ムカつきながらも、パンをくれた優しさに顔の緩みを抑えられないまま、教室へ向かう。
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