綺麗に泣く
「あ、あの、敦さん達はなんであんなとこにいたんですか?」
なんとか場を持たせようと、話しかける。
「…別に。1年の先生に用があったからね。あんたのせいで、用事できなくなったけど。」
「すみません。」
「ハハッ、んじゃ俺が用事済ましてきてやるよ!」
そう言ってお連れの方は、どっか行っちゃった。
…二人きり!?なにこのキュンキュン展開!?
「すんません、待たせて。」
おおっ、忘れてた。浮かれてる場合じゃなかった。
百武はサッと、ジャージを渡して、敦さんのシャツを受け取っていた。
「あ!あ!百武!ありがと!あたしやるから!ごめんね」
家庭科で教わった汚れの落とし方をやってみる。
そんな中、明の背中では、百武と敦さんが話している。
「百武くん、だっけ。君なんなの、この子の彼氏?ってより保護者かな?」
「え?いや、俺はこいつの幼馴染ですよ。昔から落ち着きなくて。ちゃんと見ててやんなきゃって感じです。」
うう、百武。そんなこと思っててくれたのか。ありがとなあ。
「…大変そう。でも、
楽しそうだよね、バカの相手するって。」
え!?
バカって、あたしのことだよね!?
「ま、そっすね。」
嬉しい!バカって言われたけど!楽しそうって!
あたし、バカでよかった!
「…とれた?」
「ふぇっ!」
いきなり耳元で敦さんボイスがするからビックリしたじゃんかーーー!
「あ、はい。でも、ペンキだから完全に落ちなくて…」
「だろうね。」
「はぁ、すみません。」
「うん、もういいよ。かして。」
敦さんの、その大きなゴツゴツした手を差し出された。
いやいや!ここはちゃんとクリーニングして返すべき!
「いえ!ちゃんとクリーニングさせていただきますので!」
「あ、そう。じゃ、よろしくね。」
敦さんは、百武にジャージのお礼を言って、帰ろうとしたけれど、もう一度こっちを見て。
「そこのバカ、名前なんてゆーの?」
「あ!東田 明です!」
そして、次は本当に、フッと笑って帰って行った。