夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】

天使の清らかな唇は、哀しみ、寂しさ、もどかしさ……。様々な感情でぐちゃぐちゃだったワシを甘く誘惑した。

もっと、欲しいーー。

自然と……。
ーーいや、本能と言った方が正しいのだろうか?
ワシの身体は彼女を求め、何も知らない無垢な天使を己の欲望のままに抱いた。


……。
行為中の事は、よく覚えていない。
「それくらい夢中だった」と言い切る事が出来たのならば、良かったのにな……。

ーーだか、違う。
ワシは拒絶されるのが怖くて、必死だっただけ……。
生まれて初めて心から欲しい、と強く願った彼女に拒まれたら……。この時のワシは粉々に砕けてしまいそうじゃった。

だから、見ないようにした。
自分がこれ以上傷付く事を恐れて、逃げていた。

行為中の彼女がどんな反応をしていたか、なんて……。顔を見る事すら出来なかった。


そして……。
朝日が登る前に、隣で静かに寝息を立てるユメが目を覚ます前に、物置小屋を後にした。

この日が、彼女と真っ直ぐ向き合えた最後の日だとも気付かずに……。
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