夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】

「あちらに車をご用意しております。さぁ、参りましょう……」

「ーー嫌だ」

車までの道のりを案内しようと差し出した私の手を、マオ様がパッと振り払った。


「っ……もっと、遊びたい。
まだ、帰りたくない……ッ」

絞り出したような声が、そう訴える。

私の手を振り払った事。
我が儘を言っている事、に罪悪感を感じているのは一目瞭然にオドオドした態度。

だが、それはマオ様にとって初めての反抗だった。


「心配しなくても、自分でちゃんと帰れるよ。
っ……だから、もう少しだけ。お願い……ディアス」

私を見つめる揺れる瞳が”まだ帰りたくない”と、ハッキリ言っていた。


リオン様に命じられ、幼少期から私はずっとこの方を陰ながら見守ってきた。

それは誰の目から見ても過酷で、幸せには程遠い毎日。
リオン様と別れ、アンナ様と別れ、リディア様と別れ……。彼の大切な人は、いつも目の前からいなくなってしまう。
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