夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】

『ギャランさんは、寂しいの!それでも頑張ってる強い人なの!
ユメと一緒で……家族がほしいだけなのっ』

土砂崩れに巻き込まれてこの町に運ばれてきて、三日三晩高熱にうなされていたワシを看病してくれたのはユメ。
その時に、意識ないワシが呟いた「母さん」という言葉を……彼女だけが聴いていた。

今もワシの身体に残っている、幼い頃親に受けたであろう虐待の傷痕。
最後の夜に一瞬だけ見た、晒した自分の身体を見て悲しそうにしたユメの表情は……。ワシに襲われそうになって怯えていたのではなく、ワシの”痛み”を理解しての事だった。

『だから、ユメとこの子が家族になってあげるの!帰って来たら、言うの!
『おかえりなさい、もう独りぼっちじゃないよ』って……』

「ーーあの子は、全てを知っていました。貴方の事も、自分が身籠っている事も……。知っていて、隠して、黙っていました。
精一杯恋をして、貴方を愛して、この子を産んだんです」

ッーー……。

言葉が、出ない。
全ての熱が目元に集まって、止めどなく溢れ出す。
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