夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
「お、お待たせ致しました」
私が最近頻繁に訪れる港街にあるパン屋。
そこで今日も働くアカリ様は、顔を引攣らせて笑顔を作りながら注文の品を届ける為に私の席へやって来た。
キスしたあの日以来すっかり警戒されてしまい、会いに来ても無視される日々だったが……。
「あ、ありがとうございます。アカリさん」
ーー今日は違う。
私と同じ席に座っていた兄上がそう言うと、彼女は「いえ、どうぞごゆっくり」と言って微笑みながらホットコーヒーとホットミルクをテーブルに置いた。
去り際に私に向けられる視線はジトッとしていたが、私の作戦は成功。やはりアカリ様は兄上が一緒ならば私を避けない。
ようやく思い通りになった優越感に浸りながら、仕事に戻ったアカリ様に視線を向ける。
今日は注文された品を席まで届ける係なのだな。
私達が座る外のテラス席から、透明なガラス戸に遮られた店内を見つめていると、一生懸命に接客する彼女が映った。