夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
「アカリ様は、元々私の婚約者だったのですよ」
「!……え?」
「色々あって、当時は破談になりましたが……。今は、とても後悔しています」
私の話に驚く兄上に、ゆっくりと全てを話していった。
アカリ様が我が社と取り引きをしているアルバート様の孫娘である事。5年前、婚約者であった事。しかし、当時結婚や彼女に全く興味のなかった自分が、彼女の旦那となる男に仕事と引き換えに簡単に手放してしまった事……。
アカリ様がミネア嬢に見せた覚悟を無駄にしない事以外……。つまり、その旦那が兄上である事以外は、全てーー。
「……今更ですが、気付いたんです。彼女の魅力に。
だから私は、アカリ様と真剣に結婚を考えています」
「っ……け、結婚、って。だ、だって……アカリさんは、旦那さんが……」
「いないんですよ」
「えっ?」
「彼女の旦那は3年前に、消息不明。その際に、アカリ様とは離縁しています」
「っ……」
旦那が消息不明。離縁している。
……そう聞いて、兄上は黙り込んで俯いた。