夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
「っ……危ないでしょう?そちらの手は……」
「あ……ご、ごめん。ありがとう」
アランに言われて、気付く。自分が上手く物を掴む事が出来ない左手でカップを取ろうとしていた事に……。
三年前、目覚めた時から不自由だった左手。
どうやら僕は元々は左利きだったみたいで、咄嗟の行動や意識して気を付けていないと左手で何でも掴もうとしてしまう。
これまで何度、失敗してグラスを割ったり物を落として壊したりしたか分からない。
近頃はだいぶそんな自分に慣れてきて、意識出来ていたのに……。アランの話が、相当自分にとって衝撃的であり、驚きからくる動揺になったに違いない。
驚きからくる動揺ーー。
僕は、自分の中で渦巻いているモヤモヤを、強引にそう思おうとしていた。
誤魔化すように、アランに微笑む。
「気を付けないとね!
兄がこんなんじゃ、アランも恥ずかしいよね?」
自分なりに明るくしようと、笑って話しかけた。
けど、アランはバツが悪そうな表情をすると、僕から視線を逸らしてホットコーヒーを飲んでいた。